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イワモト ヴァイオリン教室のブログへようこそ。
イワモト ヴァイオリン教室では
「正しい音程」 (正確な音程)
「本格的な音色」(美しい音)でヴァイオリンを弾くための
基礎的な演奏技術を大切に指導し
一音いちおん丁寧に
各人の進捗に合わせた課題をレッスンしています。
【注意】
この記事中では
Amazonで吟スリ加工された革を[材料]として購入したうえで
浅原皮漉所(台東区)に出向いて[加工]していただき
前田バイオリン工房(調布市)で[相談]して装着した話を書いています。
従って
前田バイオリン工房にさえ行けば[装着]してもらえる…ということでもなければ
浅原皮漉所に出掛けてさえ行けば[作製]が依頼できる…ということでもなく
Amazonで検索すれば完成状態の[製品]が入手できる…ということでもないので
ご注意ください。
ヴァイオリンに関して
私は色々な取り組みをしていて、「不易流行」とまではいいませんが、
従来のやり方を改良しただけの“月並み”に見える取り組みもある一方で
従来にはない一見すると奇抜で“風変り”に見える取り組みもあります。
具体的には
そもそも弓の巻線で使われる穴かがり糸(ボタンホールなどに使用)としての絹糸は
一般に販売されている絹糸としては最も太い絹糸なので
それよりも太い絹糸を見つけることはなかなか難しい状況のなか
西陣の糸屋というお店で
穴かがり糸という一般に販売されている絹糸として最も太い製品だけではなく
穴かがり糸よりも更に太いてまり糸という絹糸が販売されているのを見つけて
その絹糸を弓の巻線として巻いた…というのは、比較的“月並み”です。
ヴァイオリンの肩当てに装着した…というのは、相当程度“風変り”です。
他にも
[成功例]として、未だ記事にしていませんが
画期的なテールピースとして取り上げられていた製品の欠点を改良して
革命的なテールピースとなったものや
[失敗例]として、そのテールピースによって弦があまりにもよく振動するために
4弦総てで駒に弦が食い込み、食い込み防止のパーチメント(羊皮紙)を貼っても
僅か数日で駒に弦が食い込み、弦がよく響かないうえに異音までしてしまうので
パーチメントを貼った場合に比べて弦の応答特性が高まり反応は良くなるものの
ガット弦がスチール弦になってしまうような音色でチタン臭い音になること以上に
(これについては、4弦ではなく1弦だけでも、同様の影響が見られました)
では
何故そうまでして、演奏の探究のみならず部品の探求をしているのかといえば
そうした取り組みは総てヴァイオリンの響きを豊かにしようとしているからで、
ヴァイオリンの専門教育を正しく受けていない者や一般の方がご覧になると
何れの取り組みも“風変り”なことのようにしか見えないかもしれませんが、
何れの取り組みも“伝統的”な考え方に基づいていると見えるというように
その捉え方が分かれるのは、「音程の取り方」に対する“常識”が違うからです。
つまり
『パガニーニ指標』と題した記事で書いたように
“常識”というのは
「健全な一般人が共通に持っている、または持つべき、普通の知識や思慮分別。」
というのがネットで示された辞書としての正確な定義ではあっても
実際には
「一般人が自らの立場で感じる、また思っている、表面的な印象や思い込み。」
そのため
ヴァイオリンは響きを聴いて正しい音程の美しい音が奏でられるとは知らないので
「絶対音感」「指板にシール」「ピアノ」「チューナーで確認」といったことが
ヴァイオリンの音程を取るのに有効で、それによって正しい音程が取れる
という思い込みが“常識”となってしまっているのです。
それに対して
ヴァイオリンは響きを聴いて正しい音程の美しい音が奏でられると知っているので
「絶対音感」「指板にシール」「ピアノ」「チューナーで確認」といったことは
ヴァイオリンの音程を取るのに邪魔で、それによって正しい音程は取れない
という事実こそが“常識”となっているのです。
ヴァイオリンは響きを聴いて正しい音程の美しい音が奏でられるとは知らない人には
何れの取り組みも響き云々でなく“風変り”なことにしか見えないのに対して
ヴァイオリンは響きを聴いて正しい音程の美しい音が奏でられることを習った人には
何れの取り組みも響きを増す点で“伝統的”な考え方に基づくと捉えられるのです。
それは
尾の部分の針には毒があるうえに、身にはアンモニアが多く臭くて食べられず
漁師の網に掛かっても捨てられていた「エイ」について
火山灰に挟み込んで干物を作る「灰干し」によってアンモニア臭が消されて
美味しく食べられる…という取材とともに
牛の皮などがタンパク質が主成分であるのに対して、エイ皮はカルシウムが多く
その触感は石のようで、耐久性においても「牛革20年、エイ革100年」と
言われている…という説明でした。
(ちなみに「皮」を加工したものが「革」ということを、今回初めて知りました)
いずれも一定期間使っていると、革巻きが摩耗したり潰れてしまったりするので
弓棹を傷めないように保護するために、それを巻き直す必要があることから
一般的な革製品において「牛革20年、エイ革100年」と言われているのなら
ヴァイオリンの弓の革巻きで、牛革で20年はもたないものの(笑)
ヴァイオリンの弓の革巻きに、エイ革を用いれば、牛革よりは長持ちするのでは?
さらにタンパク質でなくカルシウムが主成分で硬いのなら、音もよく響くのでは?
と考え、早速調べてみました。
すると
ただ単にエイ皮だけを調達しても、表面がザラザラ・ゴツゴツで使えないので
そうしたエイ皮を吟スリ(銀磨り)加工した革が必要なことがわかり
Amazonで検索してみたところ、それに該当する製品がみつかったので早速購入し
(CDと大きさを比較した写真)
(吟スリ(銀磨り)加工されたエイ革の表面を撮影したもの)
普段お世話になっている前田バイオリン工房に、これを弓の革巻きに使って欲しいと
持ち込みました。
ところが
弓の革巻きとして使われる牛やトカゲの革であれば、タンパク質が主成分で
カッターやハサミで切れるだけではなく、目安として0.5mm程度の厚みに削り
職工の言葉を借りれば、革巻きとして使う革の左右を「ゼロにする」ことによって
革巻きにした際の右端と左端の段差を減らして滑らかにすることもできるのに
持ち込んだ状態のエイ革では、あまりにも硬くて文字通り“刃がたたず”
革巻きの右端と左端の段差を減らして滑らかにするどころではなく薄くするのさえ
加工用の刃物の刃がボロボロになるまで尽力していただいてなお
「動物の皮とは違って、削っていくと石のように硬い部分が現れて
それ以上削ると、石のように硬い部分だけになり、皮の部分が破れます」
その結果
「このように短い革巻きの部分だけを変えても、あまり音は変わらないのでは?」
という職工の見解とは違い、革巻きが分厚く重量がある状態でしか巻けなかったため
運弓をいくら工夫しても、弓が弦を押さえつけて音が潰れてしまいました。
エイ革の革巻きが分厚く重量があるため、弦の音を潰してはしまうものの
エイ革が硬く剛性が高いことから、音が遠鳴りするとともに
エイ革のそうした剛性の高さから、弓を左右に動かす加速性が高まり
音も操作性も良くなることがわかりました。
そうであるなら
エイ革をもう少し薄くすることができれば、音が潰れずに済むと考えたものの
エイ革をこれ以上薄くするには「専門の工具がないとできない」と職工が仰るので
ネットでいろいろと検索したところ
「厚く硬い革は扱いにくく
作品作りに困っていませんか?
革を漉いて厚さを調整すれば
加工性がよくなり、あなたの作品の世界が広がります。」
「浅原皮漉所は、革を薄くする<皮漉き専門会社>です。
業者向けの量産品だけでなく
サンプルや趣味の品など
どなたでもパーツ1点から、皮漉き加工いたします。」という
まさに望んだ通りの文言が並ぶサイトが見つかりました。
さらに
[ご注文の流れ]というページに
「ご依頼の際に特に予約等は必要ありません。
営業日の営業時間中にお越し頂くか、送付でのご依頼の場合は、
住所は下記の通りです。
〒111-0055 東京都台東区三筋1-3-19
有限会社浅原皮漉所
03(3851)1674 とあるので、矢も盾もたまらず直ぐエイ革を持って向かいました。
すると
浅原さんは最初は見た目の装飾性でエイ革を持参したと思われたものの
私がヴァイオリンのケースから弓を取り出して、革巻きの部分を示しつつ、
「見た目でエイ革を使うのではないのですね」と仰りつつ
「(ヴァイオリンの弓の革巻きとしては)こういう薄さの革を巻かれるんですね」
「でもエイ革の白い部分を私達は“石”と呼んでいて、これが有るから
エイ革を薄くするのは難しいんです」
「でも、どこまで薄くできるか挑戦させてください」と言っていただけたのです。
さらに
3cm程度の幅とハガキ程度の面積があれば弓の革巻きとして数回分になることや
私のほうからは「ご都合のよいように切り刻んでいただいて構いません」と伝えると
浅原さんからは「色々な部分で挑戦してみます」と言っていただけたのですが
「ただ、これを薄くしようとすると、工具の刃物がボロボロになってしまうので
丁度この週末に刃を交換する予定だったので、その時にやらせてください」
週が明けて期待しながら再訪すると、下掲の写真のように
この部分は、この程度まで薄くできました
その部分は、その程度まで薄くできました…という具合に
部分ぶぶんでチャレンジして出来る限りに薄くしてくださり、
これであれば、この何れかが弓の革巻きとして最適な利用ができると思うとともに
ここまで色々挑戦してくださり、ここまで薄くして頂けた浅原さんの気概と技術に
感謝しないではいられませんでした。
ということで
今度はこの薄くしていただいたエイ革を持って、前田バイオリン工房に直行すると
「ここまで薄くできるんですか」と職工が驚く一方で
「でも、革の白い石の部分では、やはり厚過ぎることになります」ということで
「革の端の、白い石が無い場所であれば0.6mm程度の厚みで済みますが
けれども、白い石があるから音や弾き心地が違うんでしょう?どうしますか?」
とのことでした。
とはいえ
やはり従来のように重さが過剰で弦の音を弾き潰してはいけないので
軽さを重視して、そのエイ革の端の一番薄くできた処を使うことを提案したものの
「でも、これでは見た目が普通の牛革とあまり変わらないので、同じでは…」と
薄くされたエイ革を、普段使っているカッターで職工が切ろうとしたところが
「えっ?こんなに薄いのにカッターでは全く切れませんよ」と驚かれ
代わりに大きなハサミで切ろうとしても全く切れず、
このように薄くしたエイ革であっても、当初の厚いままのエイ革の時と同様に
ノミを取り出し、上から金槌で叩いて、ようやく切り取れました。
さらに
厚い状態のエイ革では、エイ革ならではの模様が最初から明瞭に見られたものの
薄い部分のエイ革では、エイ革ならではの模様は最初はあまり見えなかったので
既述のように見た目が普通の牛革とあまり変わらないのでは…と思われていたものの
弓に巻くとエイ革ならでの石と称される模様がハッキリと浮かび上がり、これでは
カッター等では簡単に切れないことを痛感させられました。
今回、浅原皮漉所で薄くしていただいたエイ革を巻いたほうが
エイ革が厚過ぎることがなくなり、職工が幅を微調整してくださったことも相俟って
エイ革による革巻きが重量過多で弦の音を潰してしまうことがなくなり、
エイ革が硬く剛性が高いことから、音が遠鳴りするとともに響きも増大し、
エイ革のそうした剛性の高さから、弓を左右に動かす加速性も一層高まり、
まさにエイが海中で伸びやかに泳ぐかの如くに運弓できるようになりました。
加えて
耐久性については、今後しばらく使い込んでみないと最終的にはわかりませんが
ここまで硬質というより強靭なので、牛やトカゲより圧倒的な耐久性が予想され、
さらには硬質な革が指と接するので、指との接触による響きの減衰を招き難くく、
その際
カール・フレッシュが分類するところの
フランス・ベルギー式では、その効果は比較的高く
ロシア式の運弓の方法では、その効果は圧倒的という差異はあるものの
その何れの運弓の方法でも、革巻きをエイ革にした効果が確認されるとともに、
冒頭既述のヴァイオリンは響きを聴いて音程を確定できるという本来の手法にも
寄与する響きの増大も得られました。
もっとも
それなら剛性の高い金属のシートを貼れば?と思う方も居るかもしれませんが、
エイ革を巻いたことで現れる凹凸による適度な摩擦によって滑り難いことに加えて、
また
18世紀のフランスで活躍したエイ革職人のジャン・クロード・ガルーシャに因んで
エイ革はガルーシャとも称され、その中心のひと際大きな“石”の部分はスターマーク
と呼ばれて珍重されるのに対して
ヴァイオリンの革巻きとしては既述のように、牛やトカゲの革では0.5mmの厚み
の革を用いていることから、エイ革でもできるだけそれに近づけた0.6mmの厚み
の革を用いるべく、スターマークや周囲ではない端のほうを使っているので
通常は活用され難い部分が使えるという利点もあるように思いました。
ただし
冒頭既述のように
Amazonで吟スリ加工された革を[材料]として購入したうえで
浅原皮漉所(台東区)に出向いて[加工]していただき
前田バイオリン工房(調布市)で[相談]して装着した話を書いています。
従って
前田バイオリン工房にさえ行けば[装着]してもらえる…ということでもなければ
浅原皮漉所に出掛けてさえ行けば[作製]が依頼できる…ということでもなく
Amazonで検索すれば完成状態の[製品]が入手できる…ということでもないので
ご注意ください。
また
上記のようなドイツ式、フランス・ベルギー式、ロシア式…という運弓の分類以前に
冒頭既述のように、ヴァイオリンは響きを聴いて正しい音程の美しい音を奏でられる
ことを知らないためにチューナーを使っているような人達には無縁な話である点にも
ご注意ください。
ちなみに
『皮層選薄 世界初! 弓の操作性を向上させる鱏断(エイダン)』という
この記事の題名について
「そもそも“皮層選薄”と書いているのは“皮相浅薄”の間違いでは?」ですとか
「さらには“鱏断”は「エイダン」と読むなら“英断”の間違いでは?」といった
声が聞こえて来そうですし、“皮層選薄”や“鱏断”という言葉はありませんが
『皮層選薄 世界初! 弓の操作性を向上させる鱏断』で間違いありません。
つまり
“鱏断”と書いているように、そこではエイの皮を裁断したものを用い
“皮層選薄”と書いたように、それを薄く伸ばしたものを利用することで
弓の操作性を向上させることができたのですが、
何故、今までこの点について探究がされて来なかったのか?
何故、今までこの皮について探求がさてれ来なかったのか?という思いから
“世界初!”などと大言壮語してしまっています(笑)
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カテゴリ: パーツ