実はほとんどの人が演奏できない!?バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ

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最近

 バルトーク/ヴァイオリン協奏第2番と

 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタを

 それぞれ別の生徒さんにレッスンしています

その

 バルトーク/ヴァイオリン協奏第2番においては、作時期が離れているものの

 バルトーク/管弦楽のための協奏における響きが随所に感じられ

 また

 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタにおいては、作時期が離れているものの

 バルトーク/ヴァイオリン協奏第2番でのフレーズが散見され

 いずれも

 バルトークの作風が表出されているとともに

 バルトークのヴァイオリンにおける傑作であることを痛感させられます。

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そして上掲は

 BOOSEY & HOKESの古い版の楽譜です

 バルトーク/ヴァイオリン協奏第2番については古い版でも問題ないものの

(もっとも古い版でも新しい版でも、例えば下掲の部分などは「ヴァイオリン弾きなら

 当然気づくだろう」ということなのか(笑)印刷間違いのままですが)

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 バルトーク/無伴奏ヴァイオリンソナタについては新しい版に買い直しましたが

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 その理由は、新しい版の楽譜の表紙に載せられている第四楽章にあります。

それは

 『ヴァイオリンの魔法

  イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタと正確な音程の秘密』で

 その音程の取り方について書いた微分音としての1/4音程が

 バルトーク/ヴァイオリン協奏曲第2番の楽譜では第一楽章のカデンツァに入る前に

 ↑↓赤丸印部分)として印刷されていますし

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 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタにおいても

 第四楽章の微分音の1/4音程で作されている箇所は、新しい版の楽譜では

 ↑↓赤丸印部分)として印刷されているものの

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 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタの古い版の楽譜では

 この1/4音程で作されている箇所はすべて

 半音として記載されてしまっていたからです

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では

 何故そのような違いが生じたのかといえば

 無伴奏ヴァイオリンソナタ (バルトーク)のウィキペディアのページにもあるように

 https://ja.wikipedia.org/wiki/無伴奏ヴァイオリンソナタ_(バルトーク)

 白血病で闘病中であった最晩年のバルトークと親交を得て

 病を気遣い、小編成の作品として無伴奏ヴァイオリンのための作品の作曲を依頼し、

 その初演も行ったメニューイン先生が、1/4音程では難しすぎるから、

 という理由で半音での校訂譜を出版したためです

とはいえ

 1982年のメニューイン先生の来日時の演奏会の録音を聴く時、そうした改編を越え

 この作品の作を依頼し初演した者ならではの、深い愛着と理解を伝える名演だと

 感じます。

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そのような

 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタですが、現在では作者の意図通りに

 演奏することはかなり難しくなっているということは、お気づきでしょうか?

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と書くと

 「今でも普通に演奏されているぞ!」と言われてしまうかもしれませんが

 ある箇所において、作者の演奏の都合に対する“想定”は垣間見られるものの

 ある箇所における、作者の作品の演奏における“意図”という観点に立つ時

 もはや今日では

 作者の作品に対する考え通りには演奏できなくなってしまっているのです

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そのある箇所とは

 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタの第四楽章で

 既出のウィキペディアのページにも

 「左手でピチカートをしながら右手で弱音器を付け外す」と書かれている

 弱音器の付け外し(実際には外し付け)の部分です

そして

 その弱音器の着脱箇所にpiù volte ad lib.と記されているのは

 「自由に何回か(左手の)ピチカートを弾いていてね…つまり

  自由に何回か(左手の)ヒチカートを弾いている間に弱音器を付け外してね」

 という意味の“想定”であったからに違いありません。

けれども

 弱音器を外す前に弾いている音符の長さは

 例えば最初のsenza sord.の直前のpizz.の箇所では赤い四角で示した長さです

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 弱音器の装着時に弾いている音符の長さは

 例えば続く再度con sord.の直前のpizz.の箇所では赤い四角で示した長さです

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 いくら何回も弾いてみたところで

 弱音器を外すための時間は青い丸印で示した瞬間しかなく

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 弱音器を装着するための時間も青い丸印で示した瞬間しかありません。

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そのため

 かつてあるマエストロが演奏を中断し、徐にズボンのポケットから弱音器を出し入れ

 していた…というのはともかくも(笑)今日のほとんどの奏者がpiù volte ad lib.

 の前で数回ピチカートを弾いた後に弱音器を着脱しています

 弱音器の着脱が許される休符の瞬間に無理矢理着脱している感は否めず、

 弱音器の着脱のためにバルトークが“想定”した作業は何とかこなしてはいても

 弱音器の着脱によってバルトークが“意図”したリズムと疾走感が途絶えてしまうか

 弱音器の着脱に備えるため、その前後においてリズムと疾走感が損なわれた演奏

 なってしまっています

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そこで

 既出の1982年のメニューイン先生の来日時の演奏会での録音では

 該当の箇所はどのように演奏されているのか?ということ聴いてみると

 弱音器を外す箇所では(下掲の画像をクリックすると、該当部分から再生されます)

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 弱音器を付ける所では(下掲の画像をクリックすると、該当部分から再生されます)

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 というように

 何回か(左手の)ピチカートを繰り返して時間稼ぎをしてみることなく

 più volte ad lib.と書かれている以前の数回の(左手の)ピチカートだけで

 瞬時に弱音器を外し

 瞬時に弱音器を装着し

 バルトークが“意図”したリズムと疾走感を全く損なわない演奏をしています

すると

 「さすがメニューイン!」と称賛する方もいらっしゃるかもしれませんが

 既出の来日時の演奏においては、既述のように名演ではあるものの

 若かりし頃の颯爽とした演奏に比べると、加齢から来る衰えも否めず

 ゆめゆめ瞬時に弱音器を付け外しできるとは考えられないのです

 それでも瞬時に弱音器は付け外しされていることが間違いなく聴かれます。

では

 メニューイン先生は、一体全体どのようにしてその部分で

 瞬時に弱音器を外し

 瞬時に弱音器を装着しているのか?ということになりますが

 これは何も『遂に見つけた魔法のエチュード!』の記事の

 タイトルにあるように、メニューイン先生が魔法を使ったわけでなく(笑)

 記事にも書いたように、メニューイン先生に直接師事した私だからわかる

 といった類のことでもなく

 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタの第四楽章の弱音器の着脱に際しては

 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタの作を依頼し初演した

 メニューイン先生メニューイン型の弱音器を使えば、それが可能となるのです

と書くと

 メニューイン型の弱音器なら、かつての製品は廃番になったものの、現在販売

 されている復刻品を使えばいいんだ!と早合点する人が居るかもしれません。

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けれども

 メニューイン型の弱音器というとかつては

 シールドと称され現在も復刻販売されているミュート

 (ただし状は同一ですが、使用されているゴムの品質が違い過ぎます)

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 ソロと称されていたミュート

 (実物が手元に無いため、画像を加工して示しています

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 名称は無かったものの、下掲のようなミュート

 (後述のバイオリンサプライでは、名称が無いままでは販売できないため

  メニューイン ミュート with アーム という仮称で販売されたそうです

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 という3種類があり

 最後の3種類目のミュートが

 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタの初演者のメニューイン先生が考案した

 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタの第四楽章で用いる弱音器…というより

 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタの演奏の際に必須の弱音器なのです

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(アーム部分に YEHUDI MENUHIN という文字が見えます)

そして

 この弱音器は、ヴァイオリンでこのように装着し

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 駒から外す際は、先端の突起をタップし引き上げれば、瞬時に外せ

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 駒への装着では、駒の近くで上部をタップし押し下げれば、瞬時に装着でき

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 外すことも付けることも、いずれも瞬時に出来るミュートなのです。

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ちなみに

 これらの弱音器について

 私の教室のサイトのヴァイオリン関係のお店のページでも紹介させていただき

 このブログでも『3.5が決め手の夢のような松脂(松ヤニ)の購入先として

 紹介させていただいているバイオリンサプライの中村社長によると

 https://www.violinsupply.co.jp/

 2000年に、既出の3種類のメニューインの弱音器が生産終了し

 2005年に、with アームも含めて在庫を集めたものの、既に完売し

 それ以降、 with アームの弱音器は、再版も復刻もされていないそうです

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という経緯を

 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタを嘗て演奏していたヴァイオリニスト達や

 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタを今日演奏しているヴァイオリニスト達、

 またこれから演奏しようとしている方々は、把握しているのでしょうか?

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これらのことから

 『実はほとんどの人が演奏できない!?バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ

 とこの記事で題したのは、この曲が難曲だから…という意味ではなく

 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタを作曲者の意図通りに演奏するためには

 専用のパーツが不可欠であるにもかかわらず、ほとんどの人はそのパーツの存在を

 知らないということからなのです


このように

 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタを作者の意図通りに演奏するためには

 専用のパーツが必須ですが、それと同時に、ヴァイオリン本来演奏技術もまた

 必須であって、専用パーツとヴァイオリン本来演奏技術の両者が揃ってはじめて

 作者の意図通りの演奏が可能となることは言うまでもありません。

そして

 バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタを演奏したいという生徒さんには

 それに見合う演奏技術をお持ちの場合はレッスンもしますし

 それを的確に演奏するためには既述の弱音器もお貸しします。

 (私の手元には、現在、あと3個あります)

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よろしければ、こちらの記事もご覧ください。


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