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イワモト ヴァイオリン教室のブログへようこそ。
イワモト ヴァイオリン教室では
「正しい音程」 (正確な音程)
「本格的な音色」(美しい音)でヴァイオリンを弾くための
基礎的な演奏技術を大切に指導し
一音いちおん丁寧に
各人の進捗に合わせた課題をレッスンしています。
『アキレスと亀』は、ギリシアの哲学者ゼノンのパラドックスとして有名な話ですが
俊足で有名な英雄アキレスが後ろから亀を追いかける際
亀が最初に居た地点にアキレスが着いた時には、亀はほんの少しだけ先に進んでいて
亀がつぎに居た地点にアキレスが着いた時には、亀はまたも少しだけ先に進んでいて
アキレスは亀には永遠に追いつけない…というものです。
そして
実際にはアキレスは亀に追いつけるものの、一種の考察をもたらしたのと同じように
ヴァイオリンの調弦(チューニング)においても、時としてこれと似た状況があり
その音に耳を傾ける時、改めてヴァイオリンの響きの繊細さに気づかされます。
開放弦(左指で押さえない状態の弦)を完全5度で調弦し
完全5度の音程の振動の比率が2:3であることから
3-2 =1は、調弦で重音で弾いた2弦の振動の差を意味し
2の半分=1は、調弦で重音で弾いた2弦の下の弦の
1オクターブ下の音を意味し
2つの開放弦を完全5度に調弦して同時に弾いて
下の弦の1オクターブ下の音が鳴っていれば
2つの開放弦が正確に完全5度で調弦できていることになります。
上掲の図で
黒い音符の点滅は、2つの開放弦を完全5度に調弦して同時に弾いたときに
生じる下の弦の1オクターブ下の音を示していますが、これを[差音]といい
ヴァイオリンはこの[差音]を聴くことで正確に調弦できます。
といっても
[差音]が聴こえたら調弦が即完了という単純なことではなく、これまでの経験から
[差音]による調弦では、一回で定まる確率は大体80%程度で
20%程度は一回で定まらないこともあるように感じています。
と書くと
「なぁ~んだ、[差音]による調弦は、8割方しか出来ないのか」と思う方も
居るかもしれませんが、そういう意味でないことは、続きをお読みいただくことで
おわかりいただけると思います。
そして
[差音]については、左手と右手の技術によって響かせることができるものであり
[重音]の音程の正しさを規定し判断する手がかりともなることから
[重音]における[差音]は
ヴァイオリンの指導者が基本的な音階練習を指導する際、必ず教えるべき音であり
ヴァイオリンの学習者が基本的な音階練習を行う際には、必ず聴くべき音なのです。
ここで
ヴァイオリンという楽器を観察してみると
テールピースと呼ばれる逆三角形の木片で4つの弦が引き合っています。
(なお
上掲の画像は説明のためのもので
上掲の画像に映っているパーツや弦は、私の教室では使用していません)
そのため
例えば、A線を交換のために外したり、ペグの不具合で極端に緩んでしまった場合
A線にかかっていた張力はテールピースを介して他の弦に伝搬することになります。
(なお
特にE線では、張力が加わって強くなった結果、切れてしまうこともありますし、
切れないとしても傷むので、他弦を交換する際には、E線は少し下げておく
必要があります)
それは
すべての弦においてそうなるために、どの弦が緩んでも、あるいは、
どの弦を張っても、他の弦にも影響が及ぶことは避けられないのです。
ということは
アキレスがその場所に行った時には、もう亀は先に進んでいるので
アキレスは亀には永遠に追いつけない…のと同じように
ある弦をある張力に調弦した際には、もう他の弦は違う張力になっているので
これでは永遠に正しく調弦できない…ということになってしまいます(笑)
けれども
現実にはアキレスは亀に追いつけるように
実際にはヴァイオリンの調弦も出来ることは出来るのですが
既掲の
という[差音]による調弦では
他の弦があまりにも狂っていると、それがテールピースを介して他の弦にも影響し
一回の調弦では正確に定まらないため、そのような時は、他の弦をある程度
調弦した後に、改めて調弦を行うと正確に調弦できることがあります。
既述の
[差音]による調弦では、一回で定まる確率は大体80%程度で、
20%程度は一回で定まらないこともあるように感じるという記載は
このようなことからなのです。
それほどまでに
ヴァイオリンは繊細な響きの楽器であるがために
各弦の調弦だけでなく、弦相互の響きによる[差音]による調弦が必要であり
各弦の響きだけでなく、楽器全体の響きにおける調和も聴く必要があるのです。
ですから
ヴァイオリンの調弦(チューニング)において基準の音をチューナーで取ることは
あっても※、それぞれの弦をチューナーに合わせて調弦するなどというやり方では、
弦どうしの調和が得られないことから楽器全体としての響きの調和も得られず、
結果として、ヴァイオリンの繊細な響きを活かせないことになってしまうのです。
※
(あの有名なスメタナ弦楽四重奏団も、その著作に「日本製のチューナーでAの音を
合わせる」とありますが、あとは順に5度ずつ合わせていくと書いていますし、
今時であれば、スマートフォンのアプリでトーンジェネレーターを使って基準の音を
発振させれば済むことで、チューナーの出番は全く無いのです)
そうしたことからチューナーは
ヴァイオリンを正しい音程で弾いた際に美しい音が朗々と響くポイントである[壺]
(つぼ ツボ)を指し示さないばかりか、調弦にさえも活用できないのです。
このようなわけで
ヴァイオリンという楽器は
ここまで神経を使わなければならないからこそ[差音]の響きで合わせる必要があり
ここまで神経を使って普段練習していることで、正しい響きで鳴るようになり
ここまで神経を使って練習を重ねておくことで、音程を多少ずらしても鳴ることで
ここまで神経を使って普段練習していればこそ、他楽器とのアンサンブルでも音程の
調整ができ、かつ芳醇な響きを奏でてくれるのです。
私の教室には
音大生 演奏者 指導者の方へのレッスンというページもあるように、
趣味で学ぶ一般の方から、音大生(音楽大学生)、演奏者(プロ奏者)、
指導者(ヴァイオリンの先生)までもが通われていて、全員が既述のような
[差音]による正確な調弦を行っています。
と当時に
ヴァイオリンを[差音]により正しく調弦することは
ヴァイオリンの「調弦」や[重音]に留まらないあらゆる音において
ヴァイオリンの繊細な響きを活かした演奏ができるようになる第一歩なのです。
このように
ヴァイオリンの特徴である繊細で美しい響きは、[差音]による調弦の上に
成り立つものだったのです。
『アキレスと亀』では
アキレスは亀に永遠に追いつけないとされましたが、
それにも似た繊細なヴァイオリンという楽器で、ヴァイオリン本来の[差音]による
調弦ができれば、あなたもヴァイオリンの繊細な響きを活かした美しい演奏ができる
ようになるのです。
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